コラム

外国人を養子にするとき

更新日 2024年10月12日 外国人ビザ

外国人を養子にする場合の法律と手続きに関して説明します

日本人を養子にするのは日本法に従えばよいというのは当然ですが、外国人が関係してきた場合は、国際私法(通称:通則法)という法律に基づいて判断されます。
通則法について

通則法第三十一条(養子縁組の準拠法)

養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。

上記の通り養子縁組の問題はすべて養親の本国法によりますので、養親が日本人の場合は養子の国籍が何であろうと日本の法律に基づきます。

ただ条文の後半に条件が付け加えられており、これを保護要件(セーフガード条項)と呼んでいます。養子の本国法が養子を保護するための要件を求めているときは、それに応じた第三者や公的機関の許可等を備える必要があります。

外国人を養子にするときは日本法で大丈夫です
ただ、養子の保護要件として家庭裁判所の許可が必要になることが多いです

通則法第三十四条(手続きの方式)

1 親族関係についての法律行為の方式は、当該法律行為の成立について適用すべき法による。
2 前項の規定にかかわらず、行為地法に適合する方式は、有効とする。

では具体的にどのような手続きを行えばよいのでしょう。
養親が日本人で日本で養子縁組をする場合は、日本法に則って行えば問題ありません。

まずは養子縁組の申請を市区町村役場に申し出ましょう

普通養子縁組手続き

日本の市町村役場に備え付けてある養子縁組届に必要事項を記載し、当事者双方と成年の証人2名が署名押印して届け出ます。その際養親になる者が日本法で要件を満たしていることを証明する書類が必要です。具体的には、戸籍謄本、配偶者の同意が必要な場合は配偶者の同意書などです。

ただこの時、配偶者が外国人の時は注意が必要です。つまり当該配偶者が本国法の要件を満たしているかを証明する必要があります。

養子となる者については日本法を満たすかどうかに関係して、年齢を証明するもの(パスポート、出生証明書、身分証明書)等の提出が必要になります。
養子の本国法にセーフガード条項がある場合は、その要件が備わっているかどうかを証明する必要があります。養子の本国の官憲が発行した要件具備証明書があればそれを提出します。仮にその書類がない場合でも、第三者の承諾等他の手段によることも可能です。

その他養子が未成年の場合は原則として家庭裁判所の許可が必要になり、縁組届出の際にも養子縁組許可の審判書の謄本の添付が必要になります。

また、養子が15歳未満の場合は法定代理人の承諾が必要とされ、監護者いるときはその者の同意も必要になります。

夫婦で養子縁組をする場合、配偶者が外国人の場合は注意が必要です

特別養子縁組手続き

特別養子縁組の場合は、養子は家庭裁判所への請求時に15歳未満でなければならず、養親となる者は配偶者のある者でなければならない等、要件はさらに厳しくなります。

また、特別養子縁組の場合は、養子縁組自体は家庭裁判所の審判によって成立し、戸籍窓口への届け出は報告的なものになります。

その他

養子縁組によって国籍は変動しません。ただし養子縁組によって帰化条件等は緩和されます。日本人当事者の戸籍には、養子縁組関係が成立した旨の記載がなされます。
また、養親の住所への転入届により、同じ世帯として取り扱われるようになります。

養子縁組では日本国籍は取得できません
帰化が必要です

養子離縁

外国人と離縁する場合は、どのような手続きによるのでしょうか。わが国で協議離縁をしたり、裁判離縁をしたりするには、養親の縁組当時の本国法の定める要件を満たすことが必要です(通則法31条)。また日本で協議離縁を行う場合は、通則法34条に従って日本法によることができます。

日本の民法では普通養子縁組の場合、養親と養子双方の合意があれば協議離縁ができるとされています。ただこれは少数派であり、多くの国では裁判手続きを要するとされています。また離縁そのものを認めていない国もありますので注意が必要です。

協議離縁を認めている国・・・日本、韓国、台湾、中国
裁判離縁のみを認めている国・・・オーストラリア、フィイピン
離縁を認めない国・・・アメリカ各州(カリフォルニア除く)、イギリス、イタリア

日本人と外国人が共同で外国人を養子とした場合の離縁

離縁の準拠法は養子縁組をした時の養親の本国法になります。また離縁に関しては、夫婦共同縁組に関する特別の定めをしていません。そこで養親である夫婦の国籍が違うときは、それぞれの養親の本国法が適用されます。

したがって、夫婦の一方が裁判離縁しか認められていない場合には、原則裁判所の手続きを得ることが必要になってきますし、夫婦の一方が離縁が認められていない場合には、残り一方が単独で離縁を行うことになります。

Q&A

Q 日本人がフィリピン人を養子とする縁組において、その日本人に別居している12歳の嫡出子がある場合、その嫡出子の同意を要しますか

A  フィリピン法における保護要件には、裁判所の決定の他に次の者の書面による同意が必要になります。①養子となる者が10歳以上の時はその者、②養子となる者の実父母又は後見人等、③養親及び養子となる者の10歳以上の嫡出子及び養子、④養親となる者及び配偶者と同居するその養親となる者の10歳以上の嫡出でない子、⑤養親及び養子となる者の配偶者
したがって、別居している12歳の嫡出子の同意を要します


Q 日本人の夫がタイ人妻の連れ子(嫡出でない子)を養子とする縁組の場合、養子(タイ人)の保護要件にはどのようなものがありますか

A  養子となる者が未成年者(20歳未満)である時は父母の同意又はこれに代わる裁判所の命令、及び未成年者養子縁組委員会又は裁判所の許可が必要。また養子となる者が15歳以上である場合は養子となる者本人の同意が必要です


Q 日本人夫が中国(本土)人妻の連れ子を養子(4歳の嫡出子)とする場合、養子の保護要件はどのようなものがありますか

A 日本人夫が中国(本土)人妻の連れ子を養子とする場合、妻とその前夫(実父)の同意を要します。ただ中国人実父母が代諾者として届出人になり、署名・押印がある時は、これにより同意があると取り扱われます。また養子が8歳以上の時は養子本人の同意も必要になります


Q 日本に在住する日本人養親と外国人養子の協議離縁の届出を、市区町村にすることができますか

A 離縁に関しての法律は養親の本国法が適用されますので、協議離縁をすることは可能です。
またその方式も日本法によることができますので、協議離縁の届出を市区町村長にすることができます


Q 日本人と外国人が養親となり、外国人を養子としている共同縁組について、市区町村長に協議離縁の届出をすることができますか

A
 離縁に関しての法律は養親の本国法が適用されますので、日本人の養親については日本法に基づいて協議離縁ができます。他方外国人については、縁組当時の外国人の本国法が適用されますので、協議離縁が認められていれば、市区町村長に届け出できます。
外国人養親の本国法が裁判離縁を必要としている場合は、夫婦そろって裁判離縁を行うことになります。
この時外国人養子の本国法が離縁を禁止していたり、裁判離縁しか認めていないとしても、養子の本国法は関係ありません

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